2013年8月23日金曜日

Badiou, Cinq leçons sur le "cas" Wagner

Alain Badiou, Cinq leçons sur le "cas" Wagner, Nous, 2010. 読了。ニーチェ、アドルノ、ラクー=ラバルトといった「アンチ・ワーグナー」論がワーグナーの「総合芸術作品」いわゆる「大芸術」の主張を失敗したものとして論難しているのに対して、バディウーは、現代においてこそ「大芸術」はますます必要になっているのだ、という論陣を張る。その論点はいちいちもっともで、説得力がある。しかし、それにしても、バディウーもがんばって音楽そのものを引き合いに出そうとしてはいるのだが、どうしても現実の音楽現象の上を(まさに形而上だ)飛び越えてしまっている論争のような気がしてならない。ワーグナーは、そんなに単純ではない。