2010年1月11日月曜日

仰臥漫録

子規の『仰臥漫録』を読んでいたら、移竹の「霧ながら大きな町に出にけり」という句を二度にわたって誉めていて、「(こ)の如き趣に至つてはかへつて解せざる者多し/この頃の若い人は歩行く旅行の趣を解せず」とあった。これもまた Poétique du déplacement (移動の詩学)とも言えるであろう。ということはこれはけっこう普遍的なものでもあるかも。ちなみに、彼の死の直前の記述はもはや日記ではなく、歌や俳句などの列記であるのだが、その中に「花見つつ吉野の町に入りけり」の句もある。しかし、考えてみるに、彼はまた Wanderer でもあった。そして、ラフォルグもセヴラックも。ペッソアは精神的「旅行者」である。