2012年3月1日木曜日
フランス・ロマン主義
確定申告で待っている間に、フィリップ・ヴァン・チーゲム『フランス・ロマン主義』(辻昶訳、白水社文庫クセジュ)読了。ロマン主義の作家たちは、初めて大衆のために書いたという指摘が興味深い。つまり「永遠」に向かって書いていた、古典主義の作家たちと違ってということなのだが、これが音楽のロマン主義の作家たちが「歴史」を意識するようになった、というのと正反対なのだ。音楽においてはロマン主義(古典派も入るかな)以前には、「大衆」とはちょっと違うけれども、その場にいる(hic et nunc)聴衆に向かって書いていた。それが19世紀に入ると、「歴史」を意識するようになり(メンデルスゾーンの《マタイ》再演)、「永遠」に向かって(とも言えるような態度で)書くようになった(50年後の聴衆に対して書いていたマーラー)。辻氏の訳は一点だけ惜しい。「cité」の翻訳を「中の島」にルビ(「シテ」)という不思議なものにしている。大阪の人なのか知らん。まあユーゴーの専門家らしいので、なんとなく納得(微笑)。