2012年11月9日金曜日
読書感想文
まずプラーツ『肉体と死と悪魔』。これは6月のシンポジウムで同席した高階秀爾先生(勲章おめでとうございます)が、「プラーツのロマンティック・アゴニーは必読」とおっしゃっていたので宿題。しかし、デカダンの作家がこれほど多かったとは。特に19世紀末フランスはほとんど全員がそれ。特に、薔薇十字のペラダンと右翼(?)のバレスもそうだったとは、知らなかった。前者はサティ、後者はセヴラックと密接な関係がある。そして、デカダンの一部分がイギリス由来というのも面白い。次にはコルタサル『秘密の武器』。これは仏訳で読みかけたのだが(「秘密兵器」というものかと思っていた)、これほど面白いとは思わなかった。ちょっと手塚治虫を思い起させたりして(これは多分どこかに共通の根っこがあるに違いない)。最後は山本満喜子『ラテン音楽』。これは三宮の古本屋でたまたま見つけたもの。なんと1963年刊の本である。この山本という人は、山本権兵衛の孫だということで、まあ名家の出ですな。それがなぜか知らないがいきなりアルゼンチンに渡ってしまって、いろいろな音楽に出会う、というわけだが、何しろスタイルが変な女言葉(もしかしたら、当時はかっこよかったのかも)で、「〜やっちゃうのよ」みたいなので鼻につくことおびただしい。その上、表面的には、一般に虐げられた下層階級の人々への同情に満ちているのだが、本人が、どう見ても大ブルジョアでその生き方を変えていないようなので(昔、スイスのレマン湖のほとりで、うんぬん)、説得力に乏しいこと。なんだかなあ、という感じ。スペイン語の訳はどうなのか、ぼくのわかる範囲では、適当にごまかしている感じだけど。