ユイスマンス『彼方』(田辺貞之助訳、創元推理文庫)再読了。まったく忘れていたが、けっこううまくできた小説だ。ジル・ド・レーの話とそれを書物にして書こうとしている主人公の話、彼を取り巻く人物たち、特に不思議な女性、そして悪魔崇拝の話などうまくまとめていて、面白い。多少、悪魔主義についての衒学的うんちくにうんざりするところはあるが。ブーランジェー将軍の選挙と交えて、当時の世相もうつしている。薔薇十字はもちろんだが、ファーヴル・ドリヴェ(だったか)の名前も出てくるし、カゾットの名前まである。ふむふむ……。