エックハルト『神の慰めの書』(相原信作訳、講談社学術文庫)。エックハルトをミスティックなどと誰が言った。なんと彼の現実的なことよ。我々が不幸を嘆くにあたらないことを、卓抜な比喩で語る(140頁)。ある人が私に上着とチョッキとマントを貸してくれていて、寒くなったのでマントを返してもらうが、チョッキと上着はまだ貸していてくれる。これはありがたいことではないか。我々が幸福を(少々)失ったからと言って、不平を言うにはあたらないのである。
それから、彫刻家は岩や木を削るのではなく、その中から彫像を「掘り出す」という比喩があったが、これは漱石が『夢十夜』で語っているのと全く同じ。エックハルト→漱石はどのように繋がっているのか?