2011年1月24日月曜日

日は昇る?沈む?

ちょっと前のことだが、大学の授業でドビュッシーの『ムッシュー・クロッシュ』を使ったことがあって、もちろん学生たちはフランス語などは読めないので、日本語訳を使ったのだが、プリントしたのがたまたま(大判だったので)杉本秀太郎訳で、授業直前にそれが見つからないものだから岩波文庫の平島正郎訳を持って行ったのだった。杉本訳は誤訳が多いので、悪口を言いながら、平島訳と対照させて行ったのだったが、当時の音楽をけなしまくった上に結局、自然には音楽は敵わないという文脈で、太陽の話が出てくる。これは有名な箇所だが、ぼくは「一曲の交響曲は沈む夕陽に如かない」というように覚えていて、杉本訳が「昇る太陽」と訳し、平島訳が「沈む太陽」と訳しているので、またまたこれはいい加減な杉本訳が誤訳をしたなと思ったのだが、実は原文を調べてみると、逆なのだ。太陽は昇っている!しかし、あの用意周到な平島先生が誤訳をするとは思えないので、これは「故意」(?)の間違いなのではないか、と思うのである。しかしでは、ぼくの思い込みの「沈む夕陽」とドビュッシーはどこから来たのだろう?それによって、いろいろ考えられる。