2011年4月11日月曜日
麦ふみクーツェ
いしいしんじ『麦ふみクーツェ』を読む。細川周平さんから突然彼の評論付きで送られて来たのだった、「音楽を真剣に考える人間は絶対に読まなければならない」という言葉と共に。ファンタジーのようなものは苦手だし、またちょっと変わった人間の話か、という感じで最初は苦労して読み始めた。しかし、途中から引き込まれる。人間の生は音楽そのものである、というのは絶対の確信だが、いしいしんじはそれを小説にした。それゆえのフィクションである、と解釈する。あるいはメタファーと言ってもいい。音楽は時間と一緒で、それをまともに取り上げようとすると、手の間から逃げて行ってしまう(アウグスティヌスを思い出そう)。斜めに見なければいけない。それを木村敏もわかっていたし、いしいしんじもわかっているのだ。